下手なプログラマはさぼっている訳ではありません。

下手なプログラマはさぼっている訳ではありません。それどころか、上手なプログラマより遥かに努力しているのです。努力しているけれども結果が出ないだけです。簡単なプログラムで済むと思われることを、頭がパニックになってしまうような難解至極なプログラムを書いて、必死でデバッグしているものです。プログラムのことを知らない人が見たら、この人はものすごい努力家で、尊敬すべきコンピュータ技術者と思うでしょう。

でも、残業、徹夜の連続で、必死で作ったプログラムはバグだらけで、まずきちんと動くことはないでしょう。それより、有能なプログラマがちょこちょこっと作ったものの方が、はるかに完璧な動作をするものです。ある人のプログラムが10,000行あって大変動作が遅かったのを、別の人が書き直したら 1,000行で済み、実行速度は100倍になってしまうことも珍しいことではありません。一体この差は何でしょうか?

このプログラミングにおける最も重要だけれども、誰も触れたがらない問題について、色々思い当たったことを『Software Design』に1991年5月号から 1993年1月号まで『プログラミング診断室』として連載しました。本書は、その内容を元に、加筆、修正したものです。連載では誌面の関係で掲載できなかったものも、できるだけ省略なしに載せるようにしました。

下手なプログラムを診断し、何が病気の原因かを指摘し、治療方法を示し、場合によっては手術室を映し出し、手術後のプログラムを明示するという、現実をできるだけ赤裸々に描くことに主眼を置いています。診断するプログラムも、連載のために作ったものではなく、実際に仕事などで本当に必要になり作られたものの中から、本当に病気に侵されているものを選んでいます。

記述内容は、上級プログラマの下級プログラマに対する、愚痴、非難、失望、ため息の集大成と言った方が当たっているでしょう。きれいごとを言ってもプログラムの腕が上がる訳ではありません。それは単に甘やかしているだけに過ぎません。本音を書いて真実をさらし出すことにより、プログラムの本当の組み方を知ってもらうことができます。それによって始めてプログラミング技術の上達が促進できると思い、露骨に書いてしまいました。

引用元:https://quote-over100notes-jp.tumblr.com/post/661613428956446720